2011年5月29日日曜日

木彫だより



一枚板の十三仏 無縁仏供養に

精緻な彫刻1年3か月かけ

新座市西堀の和食店経営、坂上繁さん(70)が、背丈ほどあるケヤキの一枚板に、1年3か月かけて精緻な「十三仏」を彫り上げた。初七日から三十三回忌までの追善供養をつかさどるとされる十三体の仏。寺院関係者によると、寺院に納められる十三仏は掛け軸がほとんどで、一枚板に彫る仏師も少ないという。仏師によって開眼してもらい、お盆前までに、東京都清瀬市で約400年続く円福寺の無縁仏供養塔に祭られる。

■新座の坂上さん 「仏様が後押し」

丹念に彫り込まれた阿弥陀如来(中央)など

十三仏を彫り上げた坂上さん(右)と森原住職
高さ約1・8メートル、幅約60センチ、厚さ約5センチの板の中央に三回忌の阿弥陀如来を配し、その周囲に初七日の不動明王、一周忌の勢至菩薩(ぼさつ)、十三回忌の大日如来などが彫り込まれている。阿弥陀如来は約50センチ、他の仏は20~30センチ。5センチほどしかない冠、髪の毛、手にする刀剣やハスの花など、いずれも繊細な仕上がりで、円福寺の森原弘成住職(79)は「十三仏の彫刻自体が珍しいうえ、ここまで細かいものは見たことがない」と目を見張る。

富山県出身の坂上さんは22歳で上京。飲食店を経営する親類の下で料理の世界に入り、30歳で新座市に店を構えた。店を切り盛りする傍ら、知人に頼まれると表札や店の看板などを彫ってきた。幼い頃から彫刻が好きで、富山の中学校を卒業後、愛知県内の彫刻店に就職、上京するまで技を磨いた経験があるからだ。

腕を見込んだ知り合いの工務店が20年ほど前、森原住職に坂上さんを紹介。寺院に納める彫刻を手がけるようになり、山門の彫刻や欄間の飾りなど本職顔負けの依頼をこなしてきた。

その森原住職から「十三仏」の大仕事を打診されたのは一昨年の秋。知人が用意してくれたケヤキの硬さに負けないようにと、5本前後の彫刻刀を特注、仏像関連の書物などで表情や装飾品などを調べ、その年の12月から作業に入った。

図面を書いて配置を決め、中央の阿弥陀如来から一体一体、ノミと金づちで粗彫りしてから彫刻刀に持ち替え、表情の細部まで彫り進めていった。「お寺の仏様を彫らせてもらえるのは光栄だったが、板が1枚しかないので失敗できない」。今年2月末に完成するまで、毎月15日間前後を作業日に当て、円福寺で般若心経を唱えてから、午前9時から午後5時まで打ち込んだ。

完成した十三仏を前に、「これまでで一番の大作。出来栄えもいいと思う。仏様が後押ししてくれたおかげです」と坂上さん。森原住職は「これを祭れば無縁仏も浮かばれるだろう」と話している。

(2011年5月25日 読売新聞)



1 件のコメント:

  1. 長期間、十三仏を彫終えることが出来ました、御寺の住職様、仕事場をお世話していただいた市川社長に感謝しています。この十三仏様、人々の供養と西方浄土に導いて下さることを願っています。

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